1.日本茶系スタンド、Satén(サテン)
夜の西荻窪、人気の少ないなかを線路沿いに歩いていると、あたたかな明りをともした一軒のお茶屋さんが見えてくる。西荻窪にある日本茶系スタンド、Satén (サテン)だ。日本茶系スタンドとは、テイクアウトでも店内でも、気軽に日本茶を楽しめるお店のこと。コーヒースタンドの日本茶バージョンと考えたらいい。 お店の中に入って、一番人気の抹茶ラテを頼んでみた。カウンター席に座ると、さっそくお店の人が目の前でお茶を淹れ始めてくれた。牛乳が入った透明なグラスに、茶せんで丁寧にたてた抹茶がゆっくり注がれていく。きれいに二層に分かれた抹茶ラテが完成し、カウンター席の目の前に運ばれてきた。インスタ映えも間違いない。
二層に分かれたラテを、くるくる回して飲んでみる。
少しほろ苦い抹茶の味の後に、ミルクの甘みがすっと舌に広がる。抹茶ほんらいの香りと旨みを楽しめる、砂糖いらずの抹茶ラテだ。
この抹茶ラテを淹れてくれたのは小山さん。長年日本茶をお店で出してきた経験と知識に基づいて、Saténのお茶一杯一杯を、心をこめて淹れてくれる。隣に映るのは藤岡さん。コーヒーバリスタの経験を活かし、コーヒーや美味しいサンドイッチ類を作ってくれる。 Saténは、小山さんと藤岡さんの二人が立ち上げたお店だ。
2. Satenのコンセプト“Leaf to Relief”
二人がゼロから作り上げたSaténには、大切にしているあるコンセプトがある。
“Leaf to Relief -茶葉から一服へ-”
一言でいえば、お茶の世界のサイクルをぐるぐると回していくこと。一杯の美味しいお茶を楽しむまでには、茶葉の生産から加工、そしてお茶として淹れられるという過程がある。その一つ一つの過程を飲み手に見える透明なものにして、生産者、お店、お茶を飲む人たちの間のサイクルを持続的に回していこうという考え方が、“Leaf to Relief”だ。コーヒーの世界にある“Seed to Cup”と同じような考え方だ。 小山さんや藤岡さんたちは、この“Leaf to Relief”の考え方を日々Saténで実践している。お店で使われる茶葉も、お店のメニューも、そしてお店の雰囲気作りも、みなこのコンセプトから紡がれている。
3. 生まれ育ちの分かる、Saténの茶葉
Saténの茶葉は、生まれ育ちがよく見える。
茶葉は、単一農家から仕入れている。茶葉の生産と加工を分業させずに自分たちで共に行っている農家のことだ。同じ人が生産と加工をするから、両方の過程の細部まで人の目が行き届きやすい。 そして小山さん自らがその農家さんに会いに行った上で、茶葉を選んでいる。だからSatenの茶葉はどこで育てられたのか、どういう風に加工されたのかということがよく見える。 自分が飲んでいる茶葉の生まれ育ちの物語が分かっていることは、飲み手の安心感につながって、目の前の一杯をより特別なものに感じさせてくれる。お茶を飲む人が安心して、そして満足して、お茶に触れてくれることが、お茶の世界をくるくる回していくことにつながっていく。
4.Satenの多様な品ぞろえ
日本茶と言って、少し敷居の高さを感じる人はいるかもしれない。Saténでは、そんなお茶に馴染みの無い人にもお茶に接してもらえるよう、幅広い飲み物や軽食/デザートのメニューを用意している。
お茶のメニューについては、純粋に煎茶を味わえる一杯から、人気の抹茶ラテ、他にもほうじ茶チャイ、JAPANESE SPICE MATCHAなど、Saténオリジナルのお茶がそろっている。どの一杯も、茶葉そのものの味を楽しめるように作られている。茶葉の農家さんたちや小山さんたちの思いのこもったお茶だ。
そして実は、Saténにはコーヒーもある。長年のバリスタ経験を持つ藤岡さんが淹れる一杯だ。日本茶の気分でないときでも、美味しいコーヒーで一服できる。
また、お茶と同じくらい素敵なのは、Saténの軽食とデザートだ。たまごサンドやしば漬けベーコンサンド、抹茶プリンやアフォガード、等々。お茶やコーヒーにあわせて気になるものを選んでみよう。 どれを注文しても、小山さんや藤岡さんたちが心をこめて用意してくれる。お茶にあまりなじみが無い人でも、きっとSaténのお茶に満足できるだろう。
5.上質なSatenの空間
お茶をおいしく味わうには、お茶を飲む空間も大切だ。Saténでは、すがすがしくてあたたかな空間が作られている。
Saténの空気は、すがすがしい。Saténは基本的に、出入口のガラスとびらを開放している。常に外の清々しい空気が店内に広がり、コンパクトな店内でも広々と感じられる、さながら、古民家の縁側にすわっているときのような感覚だ。隣に走る中央線に電車がくれば、ガタンコトンと音がするし、下校中の小学生が横切れば、仲睦まじくふざけ合っている声がする。Saténは西荻窪の街に溶け込んでいる。西荻窪の日常の空気を感じながら飲むお茶は、すっと心を穏やかにさせてくれる。
また、Saténの雰囲気は、あたたかい。Saténの人たちが、積極的にお客さんとのコミュニケーションを楽しんでいるから、人とのコミュニケーションを通じてあたたかな気持ちになれる。お店の人とのちょっとした会話でほっこりした気分になれば、ますますSaténのお茶を美味しく感じられる。 少人数でSatenに行ったときは、カウンター席がおすすめだ。カウンター席では、お茶が淹れられる様子を目の前で見ることができる。また、気になったことがあれば気軽に店員さんに尋ねられる。他にもテーブル席や縁側席があり、複数人で話しながらでも、外の空気を吸いながらでも、お茶を楽しむことができる。もちろんテイクアウトも可能だ。
6.ふたたび、“Leaf to Relief-茶葉から一服へ-”
Saténでは、丁寧に淹れられた様々なお茶を、穏やかな雰囲気の中で、お店の人とのコミュニケーションを楽しみながら味わうことができる。それらはすべて、“Leaf to Relief -茶葉-から一服へ”のコンセプトから生まれている。“Leaf to Relief”、お茶の世界をくるくる回して元気にしていくこと。それが、Saténが実現しようと取り組んでいることだ。 くるくるとサイクルが回っていくことは、実はお茶の世界に限らず、大切なことだ。経済がうまく回ることとは、お金が人の手をじゅんぐりに回っていくことだ。食生活の健康とは、日々食べるものが消化・排泄されるサイクルで保たれるものだ。どこかでサイクルが滞ってしまうと、お金も健康も、全体がうまく立ち行かなくなってしまう。世の中に、そのようなサイクルの下に成り立っているものは少なくない。Saténの実践する世界観は、私たちの日常生活と交差するものが、きっとある。 ぜひとも、Saténが大切にしている“Leaf to Relief”というコンセプトを、Saténのお茶を通して味わってみてほしい。深い思いが込められた一杯が、私たちの日々の生活をより豊かなものに、味わい深いものにしてくれる。Saténの人たちは、いつでもあなたの来店を心待ちにしているだろう。
Satén japanese tea 営業時間:10:00~21:00 (金曜日のみ10:00~23:00)
定休日:月曜日 最寄り駅:JR中央線 西荻窪駅
住所:〒167-0054 東京都杉並区松庵3-25-9 (https://goo.gl/maps/E6VhiNwYn6E2)
ホームページ:https://saten.jp